- 床にモールを貼りたくない
- できるだけケーブルを隠したい
- オフィスの景観を大事にしたい
- 床はタイルカーペット (もしくは絨毯)
そんな時はフラットケーブルでの配線が最適です。
カーペットの下にフラットケーブルを使って配線することで、床の凹凸部分を少なくし、美観を損なわずに済みます。
じゃあ、ケーブルなんてフラットケーブルだけでいいんじゃない?と思うかもしれませんが、フラットケーブルは実は高いんです。(通常のケーブルより10倍くらい高い)
というわけでコスト面を考慮すると、すべての部分をフラットケーブルで配線するのではなく、次のようにしてみてはいかがでしょうか?
- モールを貼ってもいい場所では、通常のケーブルを使い、モールを貼りたくない場所ではフラットケーブルを使う
- 配管を使える場所では、通常のケーブルで配線し、配管出口から先はフラットケーブルを使用する
都合上、どうしてもモールを貼りたくない場所や、見た目を大事にしたい場所は出てくるものです。
そんな場所でとても役に立つフラットケーブルでの配線について説明します。
フラットケーブルの種類
フラットケーブルにも様々な種類があります。
価格や形状、施工場所の状態などを考慮して、最適なフラットケーブルを選択するようにしましょう。
電話用フラットケーブル
電話回線は基本的には、2芯の銅線を使用して通信を行います。
この2芯のケーブルのことを通称「1P」と呼びます。Pはペアのことですね。
この1Pに対して電話端末を1台接続する形になります。
電話用のフラットケーブルは、そういった事情から1P単位で簡単に分離できるように設計されています。
電話用フラットケーブルは大きく分けて2P、10Pのケーブルがあります。
ちなみに図のケーブルは2Pフラットケーブルです。1P単位で分離できます。
LAN用フラットケーブル
LAN用のケーブルは、8芯の銅線を使用して通信を行います。8芯なので4Pですね。
LANケーブルは通信品質を保つために、2芯単位でより合わせられており、電話用のフラットケーブルよりも少し厚みがあります。
ケーブルを保護するために、ケーブルの左右にガイドがついているタイプもあります。
ガイドがついた状態のままでは、配線時に方向を曲げることが難しくなるので、曲げる部分に関しては、ガイド部分を取り除いて配線します。
LAN用フラットケーブルは、電話用フラットケーブルと異なり、1本につき8芯(4P)全て必要となるため、1P単位での分離はできません。
通常のケーブルをフラットに変換するための補助用品
補助用品を用いることで、通常のケーブル (丸型のケーブル) をカーペット下に配線することもできます。
補助用品にはケーブルを入れ込む溝があり、溝以外のガイド部分は、なだらかな斜面になっています。
ガイド部分で溝に入れたケーブルを保護するので、踏まれても大丈夫なようになっていますが、フラットケーブルに比べるとかなり厚みがあるので、あまり多用することはできません。
ピンポイントでケーブルを床下に隠したいときに使用しましょう。
フラットケーブルの配線経路
フラットケーブルを使用するためには次の条件が前提になります。
- 床面がタイルカーペットであること
- 床面が絨毯であること
また、ケーブルが隠れるからといって、どこでも配線していいわけではありません。
フラットケーブルを配線するにあたって、最適な経路を選択するようにしましょう。
フラットケーブルに荷重がかからないようにしよう
フラットケーブルの上に、大きな荷重がかかる場所は、配線経路からはずしましょう。
- 机の脚の下
- キャビネットの下敷きになる
- 椅子の稼働範囲
これらの場所を配線経路に選択すると、次のようなデメリットがあります。
- ケーブルがショート (短絡) してしまう
- ケーブルが断線してしまう
- 接続している機器の故障の原因になる
気を付けないといけませんね。
机の下に配線するときはできるだけ端を選ぼう
ケーブルを接続するための機器は、たいてい机の上にあるものです。
机の下にフラットケーブルを配線するときは、次のように配線しましょう。
- 机に対して水平、もしくは垂直になるように配線
- できるだけ机の端に沿わせる形で配線
- 机の脚の下敷きにならないように配線
机の端付近を選択する理由は
- 邪魔になりにくく
- 椅子の稼働範囲に入らず
- 踏まれることも少ないので
- ケーブルも損傷を受けることが少ない
からです。
できるだけ通路の端を選ぼう
通路上にフラットケーブルを配線するときは、通路の真ん中ではなく、できるだけ端を経路として選びましょう。
真ん中付近に配線すると、人通りの多い通路では頻繁に踏まれることになり、ケーブルの損傷の原因になります。
物を置かれそうな場所は避けよう
一見何もない場所でも、将来的には何か置かれるかもしれない。
そういう場所は、経路からはずして配線するようにしましょう。
壁沿いや柱付近などは、キャビネットや荷物が置かれる可能性が高いので、そういった場所では少し距離を空けて配線するようにしておけば、ケーブルが下敷きになる事態を避けることができます。
フラットケーブルでの配線のポイント
フラットケーブルは基本的には、タイルカーペットや絨毯の下を配線することになるのですが、ケーブルがねじれた状態で配線されてしまうと、次のような状態になってしまいます。
- ケーブルのねじれた部分が損傷しやすくなる
- ねじれた分だけ厚みが出るので、カーペットの盛り上がり部分が目立ってしまう
配線したフラットケーブルを長期的に使い続けるためには、ねじれをできるだけ少なくして、ケーブルへの負担を少なくしなければなりません。
また、配線するフラットケーブルの本数が多くなってくると、どうしても重なりあう部分が出てくるので、配線経路の工夫も必要になってきます。
上記の内容を踏まえた上で、フラットケーブルでの配線のポイントを説明しましょう。
- フラットケーブルはできるだけまっすぐに配線しましょう
- タイルカーペットならカーペットの中央に配線
- どうしても曲げなければならない部分には、養生テープで固定
- フラットケーブルはできるだけ整列して配線
- フラットケーブルは必要最小限の範囲で使用する
フラットケーブルはできるだけまっすぐに配線しましょう
フラットケーブルは基本的には、折り曲げずに、まっすぐに配線するのがベストです。
折り曲げた部分は、ケーブルの損傷を招く原因となるだけでなく、厚みが増す分カーペットの盛り上がり部分が目立つようになります。
フラットケーブルを配線するときは、できるだけまっすぐに配線できるような配線ルートを選びましょう。
タイルカーペットならカーペットの中央に配線
多くのタイルカーペットは50センチ角の大きさとなっており、糊で床に貼り付けられています。
タイルカーペットの材質や糊の接着状態、ケーペット下の床の状態によっては、一度はがしてしまうと粘着力が弱くなり、元のような状態に戻せなくなることがあります。
そういう状態の悪い場所に、フラットケーブルを配線するときは、タイルカーペットの端付近ではなく、中央付近を選択して配線するようにしましょう。
タイルカーペットの端付近に配線してしまうと、次のような事が起こります。
- タイルカーペットの端が浮き上がってしまう
- 浮き上がった部分でつまずく
- 浮き上がった部分が机や椅子の脚に引っかかる
- タイルカーペット同士がずれる原因になる
- フラットケーブルがむき出しになり、ケーブルが傷む原因になる
タイルカーペットの中央付近に配線しておけば、そういった原因を少なくすることができます。
どうしても曲げなければならない部分には、養生テープで固定
フラットケーブルは性質上、曲げずに配線することが望ましいのですが、実際には曲げずに目的の場所まで配線するのは難しいことでしょう。
フラットケーブルを曲げて配線を行う場合には、曲げた部分とその両サイド部分を養生テープで動かないように固定して保護するようにしましょう。
曲げて配線をした部分は、厚みが増すため、タイルカーペットが盛り上がり、ケーブルの損傷を招く原因となります。
曲げた部分は、ケーブルが何かの拍子にずれることがあるので、ずれを防止するためにも養生テープでの保護はとても有効です。
フラットケーブルはできるだけ整列して配線
フラットケーブルを大量に配線するときには、できるだけケーブル同士を整列して配線するようにしましょう。
水平もしくは垂直に整列して配線することで、重なる部分を最小限に抑え、厚みを少しでも減らします。
タイルカーペット裏の粘着力が十分強ければ、フラットケーブルを配線したあとでも問題なく元に戻せます。
逆に粘着力の弱いタイルカーペットの下に、フラットケーブルを大量に配線してしまうと、粘着力が弱いため、元のようにタイルカーペットを貼り付けることができなくなることがあります。
タイルカーペットの状態に応じて、ある程度距離の間隔を空けて、整列して配線するようにすれば、タイルカーペットの状態が荒れるのを減らすことができます。
粘着力に不安がある場合は、ポイントポイントで養生テープで固定するのも有効です。
フラットケーブルは必要最小限の範囲で使用する
フラットケーブルは通常のケーブルに比べて10倍程度の価格の違いがあり、とても割高になっています。
コスト面を考えると、極力、通常のケーブルを使って配線するようにして、どうしても必要な所でだけフラットケーブルを使用するほうが賢い選択といえます。
- モールを貼れる場所では、通常のケーブルで配線する
- 配管を使える場所では、配管内は通常のケーブルを使用し、配管出口からはフラットケーブルを使用する
- OAフロアではフラットケーブルを使用せず、床下に通常ケーブルで配線をする
このように、条件を設けて絞り込んでいけば、フラットケーブルの使用を最小限に抑えることができます。
フラットケーブルでの配線例
フラットケーブルの配線で主に利用されるのは次の3種類です。
- 電話線
- LANケーブル
- 電気 (電気のフラットケーブルはあまり見かけませんが、販売されています)
フラットケーブルは通常のケーブルに比べてコスト高になるので、効率よく配線できるルートを選択しましょう。
フラットケーブルでの配線 電話線の配線ルート例 その5
接続する電話機を、設置する場所に向けて、90度単位で垂直、または水平にまっすぐに配線します。
壁際で、機器やキャビネットなどの影に隠れるような場所では、逆にフラットケーブルは使用せずに、通常のケーブルで配線します。
通常のケーブルを、壁沿いに這わせたほうが配線しやすく、ちょっとした配線の変更などの融通もききやすいからです。
フラットケーブルでの配線 LANの配線設計例 その5
机の各島ごとに幹線のLANケーブルを配線、SW-HUB(スイッチングハブ)を設置して、そこから端末を接続する設計です。
通路を横切るようなLANケーブルを配線するときにのみ、フラットケーブルを使用します。
島内に設置したSW-HUBから端末間を接続するケーブルは、島内に隠せるので、通常のケーブルを使用します。
フラットケーブルを使ったLAN配線としては、オーソドックスな設計となっています。
フラットケーブルでの配線 LANの配線設計例 その6
机の各島ごとにSW-HUB(スイッチングハブ)は設置せずに、大元のSW-HUBから端末まで、全てダイレクトにLANケーブルを配線する設計です。
設計例として取り上げましたが、フラットケーブルで、この設計通りに配線するのはほぼ不可能でしょう。
LANのフラットケーブルは、電話用フラットケーブルと違い、1本あたりのケーブルのボリュームが大きいので、大量にカーペット下に配線するのには向いていません。
また、コスト面でも中継用のSW-HUBの機器代と、フラットケーブルの費用を天秤にかけた場合、フラットケーブルの費用のほうが明らかにコスト高になります。
全てフラットケーブルで配線するほうが良いと思われるケースは以下の条件を満たした時くらいでしょうか。
- 端末が各所に分散していて、フラットケーブルが重なり合うことが少ない
- 距離が長く、モールを貼るよりもフラットケーブルのほうが費用対効果が高い
上記の条件を満たしているのであれば、フラットケーブルがおすすめです。
最後に
フラットケーブルは、通常のケーブルよりもコスト高になりますが、長期的な視点で考えると、コスト削減のメリットが出てくることもあります。
少しケーブルに余長を持たせて配線しておけば、50センチ×50センチのタイルカーペット単位で、ケーブル位置を調整できるので、ちょっとした場所の変更にも簡単に対応できます。(あくまでもケーブルが届く範囲に限りますが)
逆にモールでの配線だと位置が少しずれただけで、モールを貼り直さなければならないことがあります。
年間に何回もレイアウト変更を行うようなオフィスの場合、フラットケーブルのほうが融通がききやすいので、モール配線よりもメリットがあります。
タイルカーペットで、尚且つ配線ボリュームが多くないのであれば、私はフラットケーブルをおすすめします。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。